6月7日、中国各地で恒例の大学統一入学試験(通称「高考」)が行われた。毎年この時期になると、新聞やSNS上で「高考」に関する話題が溢れている。
受験生を受験会場まで送り届けるタクシーのボランティア活動が定着し、保護者たちの力の入れようも日本の「お受験」に引けを取らない。試験当日は、ゲン担ぎの言葉などが書かれたTシャツを着ているお父さんたちや、手に飲み物や食べ物を持ったチャイナドレスのお母さんたちが会場の門の外でわが子のためにエールを送ったり、試験を終えたわが子を迎えに来たりしている。
今年はある動画が注目を集めた。試験が終わって、校門から出てくる受験生たちを迎える大勢の保護者の中に、ひとりオレンジ色の制服を着た清掃員の母親がいた。息子の姿を見つけると、駆け寄り水のペットボトルを差し出した。いるはずのない母の姿に驚いて「おかあさん、どうしたの?」と息子が聞いた。「急いで仕事を終えて来たのよ。朝あんたを見送ることができなかったから。」言いながら、感極まった母親の日に焼けた顔にひとすじの涙が流れた。黙って水を受け取り、母親に背を向けて歩き始めた息子もこっそり涙を拭いていた。
ほんの数秒間の動画だが、貧しい身なりの親子の姿に深い感動が広がった。朝早くから働き、限られた収入で家族の生活を支えてきた母親に、「世界一美しい母親だ」と称賛の声が寄せられていた。